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参議院選挙後の新たな改憲情勢を迎えて 「九条の会」の声明 

参議院選挙後の新たな改憲情勢を迎えて

2019年7月31日(水)九条の会

参院選を経て、安倍改憲をめぐる情勢は新たな局面に入りました。2017年5月3日の改憲提言以来、自民党は衆参両院における改憲勢力3分の2という状況に乗じて改憲を強行しようとさまざまな策動を繰り返してきましたが、その後2年にわたり市民の運動とそれを背にした野党の頑張りによって改憲発議はおろか改憲案の憲法審査会への提示すらできませんでした。そして迎えた参院選において、改憲勢力は発議に必要な3分の2を維持することに失敗したのです。
3分の2を阻止した直接の要因は、市民と野党の共闘が、「安倍政権による改憲」反対、安保法制廃止をはじめ13の共通政策を掲げて32の一人区全てで共闘し、奮闘したことです。また、安倍9条改憲NO!全国市民アクション、九条の会が、3000万署名を掲げ戸別訪問や駅頭、大学門前でのスタンディングなど草の根からの運動を粘り強く続けることで、安倍改憲に反対する国民世論を形成・拡大する上で大きな役割を果たしたことも明らかです。
しかし、安倍首相は任期中の改憲をあきらめていません。それどころか首相は、直後の記者会見において「(改憲論議については)少なくとも議論すべきだという国民の審判は下った」と述べて改憲発議に邁進(まいしん)する意欲を公言しています。これは、安倍首相一流のウソを本当のように言うもので、参院選の期間中もその後も、「安倍政権下での改憲」に反対の世論は多数を占め、改憲勢力が3分の2をとれなかったことこそが真実です。
ところが、安倍首相は、自民党案にこだわらないと強調することで、野党の取り込みをはかり3分の2の回復を目指すなど、あらゆる形で改憲強行をはかろうとしています。
安倍9条改憲を急がせる圧力も増大しています。アメリカは、イランとの核合意から一方的に離脱し挑発を繰り返した結果、中東地域での戦争の危険が高まっています。トランプ政権はイランとの軍事対決をはかるべく有志連合をよびかけ、日本に対しても参加の圧力を加えています。こうしたアメリカの戦争への武力による加担こそ、安倍政権が安保法制を強行した目的であり、そして安倍9条改憲のねらいにほかなりません。辺野古新基地建設への固執、常軌を逸したイージスアショア配備強行の動きも9条破壊の先取りです。
6年半を越える安倍政治への不信とあきらめから、投票率が50%を割る事態が生まれています。この民主主義の危機を克服し再生するためにも、市民一人一人の草の根からの決起が求められています。参院選で3分の2を阻んだ市民の運動に確信をもち、安倍9条改憲NO!の3000万署名をさらに推進し、広範な人々と共同して草の根から、9条改憲の危険性を訴える宣伝と対話の活動を強めましょう。
同時に、どんな口実であろうと自衛隊の有志連合への参加・自衛隊の海外派兵、さらなる軍事力の増強を許さない闘いを、安保法制の全面発動、実質的な9条破壊を許さない闘いとして取り組みましょう。

憲法問題についての東京・足立区議会での近藤やよい区長の答弁

―「改正が戦争につながるのではないかといったような漠然とした危機感、不安感」と答弁―

【解説】

1 近藤やよい区長は、元・自民党都議で、足立区長選挙では自民党・公明党の推薦を受けています。

2 足立区議会第3定例会 2017年9月21日(1日目)

自民党議員は、「憲法9条に自衛隊の存在を新たに明記することへの是非について、以上、区長の見解をお伺いいたします。」と質問をしました。

近藤区長は「私の母は焼夷弾の中を逃げまどった経験があり、大本営発表にだまされて気がついたら、全てを失っていたという中で、やはり感覚的に戦争が怖い、何としても戦争を避けたいという気持ちが強い中で、この改正が戦争につながるのではないかといったような漠然とした危機感、不安感を持っている。」と答弁をした。

3 足立区議会第3定例会 2017年9月22日(2日目)

自民党議員は「区長の答弁はちょっと問題があると、区民は大きく感じております。どうか、区民におかれては、区長の正しい認識をもう一度聞きたいな、そう思っておりますので、再答弁をお願いいたします。」と質問をしました。

近藤区長は「戦後、この70有余年の日本の平和、経済復興を支えたバックボーンにあるのは、今の現行憲法だという考えの中で、また、自治体の長として、国の最高法規である憲法を尊重し、擁護する義務を負っているというふうに、私自身考えております。 ただ、昨日の新井議員の代表質問の中でもお答え申し上げましたとおり、日本の上空をミサイルが飛び交うというような今の状況にあって、この憲法では守り切れない、憲法で防ぎ切れない異常事態、緊急事態に直面しているという認識も、また一方でございます。」と答弁をしました。

【足立区議会の議事録】

□平成29年第3回 定例会9月21日(木曜日)午後1時開議

◆新井ひでお 議員(自民党)

私は、足立区議会自由民主党を代表いたしまして、 区長をはじめとした理事者に対し、質問をいたします。真摯に受け止めていただき、誠意ある答弁を求めるものであります。

8月29日早朝、Jアラートが作動いたしました。いわば、空襲警報が鳴ったようなものであります。北朝鮮は、報復する力のないことを見越して中距離弾道ミサイルを日本の頭上に平然と撃ち込んだのであります。

その後も、9月3日には6回目の核実験を行い、9月15日には、またしても日本の上空を通過する弾道ミサイルを発射いたしました。  安倍総理は、これまでにない深刻かつ重大な脅威だと表明されましたが、この危機的な状況において、国民の不安を解消すべく、効果的な抑止力を構築することが急務であります。  日本は、過去70年間、交戦権を憲法で否定し、専守防衛だと言い続け、平和主義を通してきました。

しかし、我が国及び世界の安全保障が脅かされている現状において、武力攻撃を受けるまで反撃できない状態で、日本国、そして国民を守ることができるのでしょうか。北朝鮮の脅威にさらされている今こそ、日本の自立に向けて憲法改正への国民的な議論が必要であると考えます。

政権党の自民党では、9月12日、憲法改正推進本部を開き、党改憲案の議論をしております。党としての優先的に検討することは、9条への自衛隊の明記、緊急事態条項の創設、参議院選挙区の合区解消、教育無償化等であります。まもなく衆議院が解散され、総選挙が行われる見通しでありますが、総理は全世代型社会保障、北朝鮮に対する圧力の継続、そして憲法改正論議の推進、これらを争点として掲げるとされております。

6月7日付けの時事通信社が実施した世論調査によりますと、自衛隊の存在を新たに憲法に明記することについて、賛成が52%、反対が35.1%でありました。

直近の9月17日に実施された産経新聞とFNNの合同世論調査でも59.2%が賛成となっており、半数以上の国民が支持していることが伺えます。

念のため申し上げますが、区長は自民党所属の都議会議員を経て、現在も区民から選ばれている政治家であります。政治家として国益を考えるならば、現憲法に安全保障、緊急事態の定義がなされていないことを憂慮すべきではないかと思いますが、そこで、憲法改正に向けて国民的議論が必要だと考えるがどうか、憲法9条に自衛隊の存在を新たに明記することへの是非について、以上、区長の見解をお伺いいたします。

◎近藤やよい( 区長)

新井ひでお議員の代表質問のうち、まず、憲法改正に関するご質問にお答えをいたします。

2点、ご質問をいただきました。改正に向けて国民的議論が必要だと思うが、どうか。憲法9条に自衛隊の存在を新たに明記することへの是非についてでございます。

今回の予定をされております衆議院選挙についても、具体的な改正の文言を明記して、それを公約にして戦うことはしないというふうに新聞発表では、私、読んでおります。自民党の中でも、様々なまだ議論があるというやにも聞き及んでいるところでございます。

改正に向けてというご質問でございましたけれども、改正が必要かどうかの議論、そこもまだまだ必要かなというふうに思っております。一部の非常にこういった内容について、詳細にご存知の方については整理されている内容であっても、一区民、一国民は、まだまだこの憲法をなぜ改正しなければならないのか、また、改正したときにどういうメリットがあり、また、どういうリスクがあるのか、ないのかといったところ、一番知りたいところが、なかなか自分たちでも知ることができない、わかりづらいというような意見も聞いております。

度々、この場でもお話ししてまいりましたけれども、私の母は焼夷弾の中を逃げまどった経験があり、大本営発表にだまされて気がついたら、全てを失っていたという中で、やはり感覚的に戦争が怖い、何としても戦争を避けたいという気持ちが強い中で、この改正が戦争につながるのではないかといったような漠然とした危機感、不安感を持っている。確かに、無学な女ではございますけれども、まだまだそうした不安を持っている人間も多いのではないかというふうに、私、思います。

ただ、一方でこの北朝鮮のミサイルが上空を行き交うというような状況が、これからも続くようなことになれば、おっしゃったとおり、日本の安全上、大きな危機を迎える。ただ単に平和、平和と自分たちで手をこまねいていては、平和な状態を守ることはできないということも認識はしております。

そのことも含めて、今、国が置かれている状況が、どのように変化し、だからこそ改正が必要なのかどうかといったところについて、わかりやすく国会で議論していただくと同時に、その中身を一人でも多くの国民に広がるような議論として、身近なところでそうした情報を知ったり、議論をされるような場の設定も含めて、是非、国、政府にはご努力いただきたいと思います。

一括したような答弁になりましたけれども、今、考えている政治家と言えるかどうかわかりませんけれども、首長としての私の意見を申し上げました。


□9月22日(金曜日)午後1時開議

◆せぬま剛 議員(自民党)

私は、区民の安全・安心に足立区として、どうあるべきか、どう対処していくべきか、そのことを、その危機感を共有する足立区行政の皆さんともに、前を向いて、区民にその安心を届けていただきたい、かように思って質問いたします。

地方議会と国は一体であります。この今の状況の中での、区の積極的な思いを伝えていただきたいと思います。

さて、 憲法論議であります。憲法は、今の憲法は、当時の絶大な占領軍の影響下にあって、押し付けられたとは定説であり、私どもはこの憲法を何としても、本来の国民の手によって、国民本意の憲法にと、思いをいたしております。

なぜならば、当時の憲法作成に当たって、米軍の僅かな人数、1週間足らずの協議で、我が国に押し付けられ、そして、それを協議しようとした際には、天皇の身を保障しないなどの脅しにあった、これを史実は伝えております。

このような歴史の中で、共産党の言う新しい憲法が施行されたということに異を挟まないのは、区長の答弁はちょっと問題があると、区民は大きく感じております。どうか、区民におかれては、区長の正しい認識をもう一度聞きたいな、そう思っておりますので、再答弁をお願いいたします。

憲法を守るということは当たり前です。当たり前のその憲法を、私どもは守って、そして、その憲法の中で自衛隊は設立をされ、存在をしております。その憲法の中で存在している、その自衛隊に国民は感謝をしております。その憲法を守る中で自衛隊は働いているんです。その自衛隊を違憲だと共産党は言います。このことに、国民は戸惑っています。きちんと、このことを自衛隊の合憲を明記するべきときが来た、そのことを議論するべきときが来たと言われております。

どうか、そのことも区長は斟酌をして、合憲だとご理解していらっしゃるでしょうが、いろいろな難がある。昨日の答弁においても、災害時においては自衛隊は必要だ、明記すべきだ。しかし、明記したら戦争に巻き込まれたんじゃないか。だから、かなり問題がある。一つ一つ、そのことを解決していかないと明記すべきありきとは言えないんだと、こんな答弁でありました。

しかしながら、現状は、もはや「待ったなし」なんです。いつ、どのような、災害と言っても、武力攻撃災害が起き得る可能性が高まっているんです。そんな中にあって、そのことが起きたならば、区長は足立区民を守るために、足立区の司令官となって働かなければいけない。そのことの意識の中で、自衛隊の位置付けをきちんとするべきであります。答弁を求めてまいります。

◎近藤やよい(区長)

せぬま剛議員のご質問のうち、まず、憲法解釈に関するご質問にお答えをいたします。

現行憲法の制定過程につきまして、せぬま議員がご指摘になられたような経緯があるということは、私も本で読みましたり、又は側聞しているところでございます。

とは申しましても、戦後、この70有余年の日本の平和、経済復興を支えたバックボーンにあるのは、今の現行憲法だという考えの中で、また、自治体の長として、国の最高法規である憲法を尊重し、擁護する義務を負っているというふうに、私自身考えております。

ただ、昨日の新井議員の代表質問の中でもお答え申し上げましたとおり、日本の上空をミサイルが飛び交うというような今の状況にあって、この憲法では守り切れない、憲法で防ぎ切れない異常事態、緊急事態に直面しているという認識も、また一方でございます。

ですから、様々な考え方を持つ国民が、きちっと議論を尽くして、100人いれば100人が賛成するという改正というのは難しいのかもわかりませんけれども、やはり1人でも多くの国民がそれに参加をして、納得をいただける形の中での改正を是非、政府としても目指していただきたいと思います。

次に、自衛隊に対するご質問にお答えをいたします。

憲法には、戦争の放棄と戦力の不保持、また、国民に選出された国会議員による文民統制が明記されております。その上で、自衛隊は、現行憲法のもと、国防はもとより、災害救助活動など、国民の生命と安全を守るため尽力されているものと認識しております。

せぬま剛 議員

区長におかれましては、自衛隊員の採用の際に、心温まるご挨拶をいただいているということで、誠にありがとうございます。

さて、その自衛隊員たちは、まさかの有事の際に、この足立区にも駆けつけてくれます。その自衛隊員の皆さんを、長たるあなたが、合憲であると認めていると、憲法にも明記すべきだと言ってくだされば、どんなにか、彼らに更なる誇りと責任が持てることでしょうか。

どうか、聡明な区長ですから、その落としどころ、その言い回しの中で、自衛隊員も感謝してくれる、そんな言葉で、この憲法論議、自衛隊明記の論議、深めていく中での態度を一言お願いいたします。

◎近藤やよい  区長 

議会の答弁ですので、落としどころというところは決してございません。思っているところを責任のある立場で申し上げているわけでございますけれども、憲法、自衛隊の合憲か否かという問題については、憲法学者にもいろいろな議論があるということは、私もよく存じております。

ただ、私は自治体の長という立場で、先ほどもご答弁申し上げましたとおり、憲法を尊重する立場ということでご答弁をさせていただいたわけでございます。ご理解ください。