岸田内閣は、安倍晋三元首相の国葬を執り行うことを閣議決定した。日本国憲法を擁護して、政治と社会に活かすことを目指しているが、この立場から閣議決定に強く抗議をする。
法令上の根拠がない
19 26年に制定された勅令(国葬令)は「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の 効力に関する法律」1条に基づき失効している。岸田内閣は内閣設置法の内閣の所掌事務として「国の儀式」にあたるとして、国葬は日本国憲法に違反するものであり、閣議決定は認められない。
国民の思想・良心の自由(憲法19条)に反する
安倍元首相については、国民の間で政治的な評価が大きく分かれている。2017年には集団的自衛権行使を容認した安保法制を、多くの国民の 反対の声を押し切って成立させた。また民主主義の基盤を根底から揺るがす特定 秘密保護法の成立を強行した。アベノミクスにより、国民の中の貧富の格差を著しく拡大させた。 森友・加計学園問題、「桜を見る会」等にみられる政治の私物化にかかわる疑惑等を首相自らが引き起こした上、国会で虚偽答弁を繰り返した結果、未だその真 は明らかとなっていない。さらに自殺者まで出した行政文書の改ざん問題につ いても、未解決なままである。こうした中で国葬を実施すれば、安倍元首相を礼讃するという実際上の効果をもたらすこととならざるを得ず、弔意の強制は、思想・良心の自由 (憲法19条)に反するものである。
私たちは、安倍元首相の国葬の実施に強く反対し、閣議決定の撤回を求めるもので ある。
2022年7月
足立憲法学習会 実行委員会
東京都足立区千住1丁目24番4号 広瀬ビル 北千住法律事務所内